長島有『ぼくは落ち着きがない』

電車の移動時間に、読んでみた。

ぼくは落ち着きがない

ぼくは落ち着きがない

作者の長島有は、朝日新聞の夕刊連載で知った(高野文子の挿絵を眺めるために読んでいた)。まあ、読みやすそうだし、正月前後であちこち行かなきゃいけないので、移動のお伴として買ってみたのだ。

感想としては、正統な部室文学、というもの。
ちょっとクラスの輪から外れる人たちが集まる図書部の部室を中心に繰り広げられる、人間模様とでも言えばよいか。
図書部の男の子が書いた小説が作中小説として出てきて、主人公の女の子がそれについて色々と思ったり、主人公が出会う様々な日常のひだを小説の世界を通して理解してゆく姿とか、小難しい文学ではないけれども、ちゃんと文学している感じでもある。
そして部室が、大人となって飛び立っていく直前の、滑走路を走り出している飛行機の、飛ぶための力をためる最後の場所として見事に機能している。
飛び立つ、その最後の一瞬の、地に足が付いているようで付いていない、そんな瞬間を見事に切り取っているように思えた。

例えば、ゆうきまさみの『究極超人あ〜る』は、面白い作品であるが、登場人物たちは全然あの光画部の部室から旅立たない。それに対して本作は、まさに青春と旅立ちの直前を書いた、正統な部室文学であるといえよう。

ただ、ある種のお遊びであるとは分かっているが、表紙裏のその後のストーリーは蛇足のようにも感じる。